ネットワークエンジニアのフリーランス事情|報酬相場・将来性を解説!
特定の組織に所属しないフリーランスという働き方が、ここ日本でも広がりを見せています。特に、開発需要の拡大に人材の供給が追い付かないIT業界では、フリーランスに転身するITエンジニアが増加する傾向にあります。働き方を選択する自由があるのはもちろん、能力・スキル次第で会社員時代よりも大幅に収入を増やすことが可能だからです。それは、主にインフラに関わるネットワークエンジニアであっても同じです。独立のタイミングを見計らっている会社員ネットワークエンジニアの方も多いのではないでしょうか?
それでは、フリーランス市場にはネットワークエンジニアが継続して活躍できるほどの案件はあるのでしょうか?クラウドへの移行が加速するなか、ネットワークエンジニアの今後はどうなるのか?案件の報酬相場や将来性も含め、ネットワークエンジニアのフリーランス市場の実態を解説していきます。
ネットワークエンジニアの仕事
データ共有・双方向通信の欠かせないITシステムでは、サーバとクライアントを接続するネットワークの存在が欠かせません。このネットワークを構成するスイッチ・ルーター・ロードバランサといったハードウェア、ファイアウォール・DNSといったソフトウェアに関連する仕事を担当するのがネットワークエンジニアです。大きく3つに分類できる、ネットワークエンジニアの仕事を簡単に解説していきましょう。
ネットワークの設計
クライアントの要求を満たすパフォーマンスを実現する、最適なネットワークシステムを設計する仕事です。適切なネットワーク機器を選定するための知識はもちろん、サーバやOS、セキュリティに関する知識・スキルが要求され、クライアントのニーズを汲み取るコミュニケーション能力、全てを予算内で収めるためのスキルも必要です。
ネットワークの構築
作成された設計書をもとに、ネットワーク機器やケーブルを設置・接続し、各種設定を行いながらネットワークを構築していく仕事です。メンテナンス性も考慮しながら構築していく必要があるのはもちろん、ネットワーク構築後の動作テスト、必要に応じた設定の微調整などもネットワークエンジニアが担当します。設計・構築までの工程が、ネットワークエンジニアにとっての上流工程といえるでしょう。
ネットワークの保守・運用
構築されたネットワークシステムが正常に動作しているか、保守・運用していくのもネットワークエンジニアの仕事です。基本的にはトラブルシューティング、帯域拡大や速度向上に向けた機器追加・変更などの仕事が主になり、冷静な判断力と迅速性が求められます。24時間態勢でネットワーク・サーバを監視するオペレーターとは明確に区別され、未経験者は監視オペレーターからスタートするケースが多いようです。
ネットワークエンジニアは未経験からでもチャレンジしやすいといわれますが、それは監視オペレーターという職種があるからだといえます。フリーランスとして独立するには、会社員として2〜3年程度の実務経験を積んでからというのが通常です。
ネットワークエンジニアとインフラエンジニアの違い
ネットワークとサーバは切っても切れない関係性にあるため、設計を担当するネットワークエンジニアにはサーバの知識も必要です。一方、同じことはサーバエンジニアにもいえます。サーバ設計する際にネットワークの知識は必要不可欠であり、突き詰めていえば、両方の知識・スキルがあれば上流工程を一人で担当できることになります。このように、ネットワーク・サーバを含む情報基盤全体の設計・構築・保守を担当するのがインフラエンジニアです。ただし、ネットワーク担当のインフラエンジニアという分類をする場合もあり、その定義は曖昧だといえるでしょう。
ネットワークエンジニアのフリーランス案件例
それでは、フリーランスとして活動していけるほど豊富な案件があるのか?フリーランスへの転身を検討するネットワークエンジニアの方がイメージを描きやすいように、公開されているフリーランス案件情報をいくつか紹介します。あるフリーランスエージェントで公開されていたネットワークエンジニア求人は、検索時点で456件ありました。
ネットワーク設計・構築のエンジニア求人 ・必須要件:ネットワーク構築・詳細設計経験3年以上、Cisco製品の経験 ・歓迎要件:ファイアウォール・ロードバランサの設計・構築経験 ・待遇:ネットワークエンジニア、月/〜65万円
金融機関向けネットワーク設計・構築のエンジニア求人 ・必須要件:Cisco機器を使った設計・構築経験3年以上 ・歓迎要件:クライアントとの折衝経験、マネジメント経験 ・待遇:ネットワークエンジニア、月/〜65万円
ネットワークサービス追加開発のエンジニア求人 ・必須要件:Cisco L2 / L3機器を使ったネットワーク設計・構築経験 ・歓迎要件:CCNP技術者 ・待遇:ネットワークエンジニア、月/〜65万円
保険会社向けネットワーク技術支援のエンジニア求人 ・必須要件:ネットワーク構築・詳細設計経験5年以上 ・歓迎要件:プロジェクトマネジメント経験 ・待遇:ネットワークエンジニア、PMO、月/〜75万円
パブリッククラウド設計・構築のエンジニア求人 ・必須要件:AWS、Azureの経験 ・歓迎要件:クラウドサーバの設計・構築経験 ・待遇:ネットワークエンジニア、インフラエンジニア、月/〜95万円
ネットワークエンジニアのフリーランス事情
設計・構築を中心に、ネットワークエンジニアのフリーランス案件をいくつか紹介してきましたが、保守・運用案件を含めてある一定の傾向があることがわかります。案件数・報酬相場・働き方など、ネットワークエンジニアのフリーランス案件市場の動向を、一般的な見解も交えて簡単に紹介していきましょう。
フリーランス案件数は?
まずは充分な案件数が公開されているのかという点ですが、同じエージェントでエンジニアを限定しない案件数が約1万件あったことから、ネットワークエンジニアの求人は全体の4.5%程度にあたります。PHP / Javaなどの人気プログラミング言語に比べれば少ないとはいえますが、長期案件が多く人材が不足しがちなネットワークエンジニアの状況を考えれば、充分な案件数があるといっていいでしょう。ただし、設計・構築案件というよりは、保守・運用案件が多いのもネットワーク分野の特徴です。
フリーランスの報酬相場は?
検索案件をもとにしたネットワークエンジニアの平均報酬単価は、63万円という結果になりました。しかし、これはあくまでも案件全体の平均であり、実務経験、スキル、案件内容によって報酬単価にかなりの上下変動があるのが実情です。
もっとも案件数の多い保守・運用案件の場合、報酬が時給になっているケースも少なくなく、平均しても40〜50万円程度になることが多いようです。設計・構築案件の場合であれば、50〜70万円程度にレンジは上がりますが、それでも実務経験の長いエンジニアの方が報酬は高額になる傾向もあります。サーバの設計・構築経験、クラウドの経験、マネジメント経験などのスキルが加われば、より高額報酬を得やすくなるのも特徴です。
どんな働き方が多い?
自由な働き方が選べるのがフリーランスの大きなメリットでもありますが、残念ながら、ネットワークエンジニアのフリーランス案件はほとんど客先常駐であり、基本的に会社員時代とあまり変わらない働き方になると考えられます。特に報酬額の高い設計・構築案件でその傾向が強く、ハードウェアの扱いが欠かせないネットワークエンジニアの宿命といえるかもしれません。一部リモート可という案件もないわけではありませんが、トラブルシューティングを中心にした保守案件が多く、報酬の方はあまり期待できないのが実情です。
ネットワークエンジニアの将来性
ネットワークシステムの設計、物理的な構築を仕事とするネットワークエンジニアは、これまで、オンプレミスの現場を中心に活躍してきたといえます。しかし、クラウド化の進展によってオンプレミスは減少傾向にあるのも事実です。これを踏まえ、ネットワークエンジニアの将来性を危惧する声も聞かれるようになりました。実際のところはどうなのでしょうか?
IT案件を数多く管理するエージェントの声を集約すると、大きく3つの理由からネットワークエンジニアの需要はなくならないと考えられます。ひとつには、オンプレミスが必須でインフラの刷新を必要とする大手企業が多数あること。次に、クラウドでもネットワークの設計・構築が必要なこと。最後に、新しい技術であってもインフラの基本的な知識は変わらないことです。
ネットワークエンジニアが報酬単価を上げるには?
しかし、活躍するフィールドが異なれば、求められる知識・スキルや役割も変わってきます。ネットワークエンジニアとして将来的に活躍していくためにも、フリーランスとして報酬単価を上げていくためにも、身に付けておきたい知識やスキルがあるといえるでしょう。その一部を簡単に解説していきます。
上流工程の経験
保守・運用案件よりも設計・構築案件の方が報酬が高い、実務経験・マネジメント経験のある方が報酬が高いことからもわかるように、ネットワークエンジニアとして上流工程の経験、マネジメント経験を積むのが、報酬単価アップへの近道です。それだけではなく、実務・マネジメント経験が豊富なら、好条件の案件を獲得しやすくなります。クライアントと折衝のできる、コミュニケーション能力も重要です。
パブリッククラウドへの対応
AWS、Azure、GCPといったパブリッククラウドへの対応も、ネットワークエンジニアにとって大きな課題といえるでしょう。もちろん、クラウドだからといってネットワークの仕組みが大きく異なるわけではありませんが、たとえばアクセス数・帯域などのネットワーク負荷はオンプレミスとは異なった考え方が必要です。特にクラウド系のフリーランス案件は報酬が高額になる傾向もあるため、経験を積めるプロジェクトがあれば積極的に参画するべきです。
サーバを含めたインフラのスキル
ネットワークもインフラを構成する一部だとはいえますが全てではありません。セキュリティやサーバ設計・構築を含め、情報基盤全体の上流工程を担当できる知識・スキルがあれば、高額報酬が期待できるだけではなく、仕事の幅も大きく広がります。すでにネットワークエンジニアとして上流工程を担当しているなら、ある程度のサーバ知識も持ち合わせているはずです。それを足がかりにスキルを深めていくのは、それほど難しいことではないでしょう。
シスコ技術者認定資格
フリーランスのデメリットのひとつに、信用を得にくいという点が挙げられますが、それは営業をするうえでも同様です。必須ではありませんが、シスコ技術者認定を取得したネットワークエンジニアであれば、高額報酬の案件を獲得しやすくなります。ただし、アソシエイトレベルの「CCNA」では不充分であり、プロフェッショナルレベルの「CCNP」が必要です。エキスパートレベルの「CCIE」を取得すれば会社員でも年収900万円を超えるといわれており、フリーランスなら1,000万円超も視野に入ります。
まとめ
IT化の流れが衰えを見せていない現代では、それを足下から支えるネットワークエンジニアの需要も加速する一方だと考えられます。ただし、5Gに代表されるように、ネットワーク・通信に関連する技術は日進月歩です。時代とともに移り変わるネットワークエンジニアの役割を見極め、必要とされる知識・スキルを貪欲に吸収していく姿勢こそが、フリーランスとして成功するためのカギになるのかもしれません。