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ITエンジニアの間で、特定の組織に所属しないフリーランスという働き方が広がっています。実力さえあれば、会社員として働くよりも大幅な収入アップを見込めるのがその理由ですが、メリットと相反するデメリットがあるのもフリーランスの特徴です。そのひとつとして挙げられるのが、社会的信用を得にくいことだといえるでしょう。住宅ローンを申し込んだにもかかわらず、審査を通らなかったというITフリーランスの方も少なくないのではないでしょうか?

しかし、平均的な年収であるにも関わらず、住宅ローンを組めているITフリーランスの方も多数存在します。住宅ローンの審査に通りやすいITフリーランスの特徴とはなんでしょうか?会社員と比較した審査ポイントの違いとは?申込前の注意点とは?ITフリーランスが審査に失敗しないための住宅ローンの基本を解説していきます。

住宅ローンの基本

自動車ローンなどと異なり、金融機関への申込が基本となる住宅ローン審査は、2段階に分かれる「事前審査」「本審査」双方をパスしなければなりません。購入金額が高額かつ、返済が長期間に渡るのがその理由ですが、事前審査の結果が「否認」であれば本審査に進むことすらできません。また、審査結果が「承認」であれば本審査もパスしやすいといわれていますが、「留保」判定であれば可能性は五分五分です。それでは、これらはなにを基準に判定されているのでしょうか?まずは会社員も含めた一般的な要素を解説していきます。

勤続年数・年収

長期間にわたる支払いが必要な住宅ローンでは、安定して支払いできる能力があるかが重要視されますが、その判断材料となるのが勤続年数および年収です。短くても2年、一般的には3年以上の勤続年数が最低条件とされており、少なくとも300万円以上の税込年収が必要だといわれています。ハードルとしてはそれほど高いわけではありませんが、ムリのない返済負担率は年収の20〜25%といわれているため、年収が低ければ取得物件の費用を抑える、もしくは返済期間を長く取る必要があるでしょう。

住宅ローン申込時の年齢

住宅ローン審査時に、勤続年数・年収と連動する要素として重要視されるのが申込者の年齢です。ほとんどの金融機関で住宅ローンは70歳前後まで申込できますが、完済年齢は「80歳まで」に定められているケースが多いからです。たとえば、年収550万円の方であれば、返済負担率25%で月額約11万4,000円の均等返済が可能となり、4,000万円の物件を購入しても、年率1.0%の金利を含めて35年で完済できる計算になります。つまり、45歳までに住宅ローンを組めばいいことになりますが、定年を超えても支払いが生じるリスクは金融機関も避けたいはずです。

団体信用生命保険

住宅ローンを提供するほとんどの金融機関は、申込者が「団体信用生命保険」へ加入することを前提条件としています。これは申込者に万一のことがあった場合に残債をカバーする保険であり、健康状態が悪ければ加入できません。生活習慣病を含めたリスクが高くなる、51歳以上は疾病保障特約付団信に加入できない場合があるなど、この点においても申込時の年齢は重要な要素となり得ます。

担保としての物件評価

金融機関は、住宅ローン申込者が取得する予定の物件に、抵当権を設定するための評価を行います。住宅ローンの申込者が支払不能になった場合に、物件を競売にかけて債務を回収するためですが、この評価も審査するうえでの重要な要素です。担保としての物件評価が高ければ高いほど、金融機関が負債を抱えるリスクが低くなるため、審査において有利になるといわれています。特に本審査で細かく見られる点には注意が必要です。

社会的信用

社会的信用のある人物かどうかも、住宅ローン審査で重視される要因です。具体的には、クレジットカード・ローンの利用・返済履歴、公共料金、税金、保険などの支払い状況を含む個人信用情報をチェックされます。返済遅延、滞納などが一度でもあれば住宅ローン審査に不利に働くと考えていいでしょう。また、並行して自動車ローンを組んでいる場合などは、住宅ローンと合わせた形で返済負担率を設定されてしまう可能性もあります。日本信用情報機構などで自身の情報を開示してもらえるため、不安な方は事前に問い合わせてみるのがおすすめです。

ITフリーランスは審査ポイントが違う?

ここまでで、住宅ローン審査の判定基準となるポイントを紹介してきましたが、一般的に、ITエンジニアを含むフリーランスは会社員よりも審査が厳しめだといわれています。それは事実なのでしょうか?もしそうであるなら、ITフリーランスには会社員とは異なる審査ポイントがあるのでしょうか?簡単に紹介していきましょう。

事業歴・所得が重要

ITフリーランスの場合、まずは個人事業主として開業してからの事業歴・年数で、住宅ローンが組めるかどうか判断されます。金融機関によっても異なりますが、申込条件は最低でも2年、一般的には3年以上の事業歴が必要であることが多く、独立したばかりのITフリーランスが住宅ローンの審査を通ることはほとんどありません。

当然、申込時には確定申告書3期分の提出が必要であり、判断されるのも「収入」ではなく「経費控除後の所得」です。会社員の申込条件を年収300万円に設定するある銀行では、ITフリーランスの申込条件を「所得300万円」に設定しており、ITフリーランスには会社員以上の収入が求められています。所得の多さだけではなく、年度ごとの所得推移をチェックされるのも特徴です。

連帯保証人が必要な場合も

ITフリーランスが住宅ローンで「承認」判定されるための条件として、連帯保証人を求められる場合があります。連帯保証人を要求されることの少ない会社員とは対照的だといえるでしょう。一般的には、親兄弟・親族に依頼することになりますが、連帯保証人の経済状況も審査されるため、収入が少ない場合は否認されてしまう場合もあります。特に、年収に対してローン申請額が高めになる場合は、連帯保証人を求められる可能性が高くなります。

住宅ローンで購入する建物の用途

ITフリーランスの方であれば、購入する自宅を事務所として利用することも視野に入れているかもしれません。しかし、あくまでも居住する自宅の購入費用を賄う位置付けであるのが住宅ローンです。近年では「店舗・事務所との併用住宅」への資金使途を認める住宅ローンも登場していますが、事務所スペースは50%以下という制限があるため注意が必要です。この制限は「住宅ローン控除」にも適用されるため、安易に事務所スペースを広く取ると、住宅ローンだけでなく税控除も得られなくなってしまいます。

住宅ローンに通りやすいITフリーランスの特徴

上述したように、住宅ローンにはITフリーランスならではの審査ポイントがあるのは事実です。しかし年収などの条件を含め、審査基準が会社員と大きく異なるわけではないのも事実です。平均的な年収でも住宅ローンを組めているITフリーランスが少なくないのはこのためです。それでは、住宅ローン審査に通りやすいITフリーランスには、どのような特徴があるのでしょうか?

支払い実績を含む社会的信用が高い

まずひとつには、個人事業主として社会的信用を積み重ねている方が多い、という点が挙げられるでしょう。3年以上安定して事業を継続しているといった実績のほかにも、つい忘れがちな各種支払いを遅延なく済ませているなど、当たり前の義務を果たしていることが肝心です。安定性が重視される住宅ローンでは、キャッシングを重ねている、事業融資額が大きいなど計画性のなさがマイナスポイントになります。

自己資金が多い

自己資金が多い=頭金を大きくして返済負担率を抑えるのも、審査を通りやすくするためのポイントです。一般的に、頭金は総額の2割程度が必要といわれていますが、それ以上の貯蓄が証明できれば審査時に有利に働くと考えられます。

ムリな節税をしていない

税金の支払額を抑えるために、できる限りの節税対策を行う個人事業主は少なくありませんが、住宅ローンに通りやすい方はムリな節税をしていないという点で共通しています。事業でしっかりと黒字を出して適切な税金を支払っている事実は、審査時に非常に有利に働きます。少なくとも住宅ローンの審査が終わるまでは、経費計上を妥当な項目だけに絞り込んでおくといいでしょう。

ITフリーランスが住宅ローンを組む際の注意点

それでは、住宅ローンを組みたいITフリーランスが審査を有利に進めるためには、どのような点に注意しておくべきなのか?住宅ローンに通りやすいITフリーランスの特徴を踏まえ、いくつかの要素を紹介していきます。

メインバンクを決めて実績を積み上げる

報酬の受取や各種支払いなど、ITフリーランスとして活動していくには金融機関との関わりが欠かせませんが、ひとつの金融機関をメインバンクとして定め、貯蓄を含めた実績を積み重ねていくのが住宅ローン審査にも有効です。事業収支を含めたお金の流れを把握できている金融機関なら、住宅ローンはもちろん、各種融資の審査にも有利に働くからです。特に、地域貢献を理念に掲げることの多い地方銀行、信用金庫は、比較的各種ローンの審査が通りやすいといわれているため、メインバンクとしての有効性はメガバンクよりも有利かもしれません。

クレジットカードの実績を作っておく

税金・保険金・各種公共料金などを確実に支払うのはもちろん、クレジットカードの利用実績を作っておくのも住宅ローンのハードルを下げるためのポイントです。クレジットカードの審査自体が難しい場合もあるかもしれませんが、近年ではITフリーランス向けのサービスも利用できます。ポイントとなるのは金額ではなく、毎月確実に返済しているかどうかです。公共料金などの支払いをクレジットカードにまとめておけば、管理も楽になって実績も作れるため一石二鳥です。

フラット35・ITフリーランス向け住宅ローンを利用する

住宅ローンを提供する金融機関は多数存在しますが、近年ではITフリーランス向けのサービスを提供する銀行も登場しています。また、住宅金融支援機構が提供する住宅ローン「フラット35」なら、確定申告書の提出が1期分でも申込可能なため、事業年度の浅いITフリーランスでも申込可能です。一般的な住宅ローンでは、事業借入も返済負担率に含まれてしまいますが、フラット35では事業借入を除外できるのも大きなポイントです。ただしフラット35では、耐震性などの技術基準に適合した物件のみが対象です。中古住宅などを購入する際は利用できない可能性もあるため注意が必要です。

独立前に住宅ローンを組むべき?

自宅購入を検討する理由やタイミングは人それぞれですが、事業年度の浅いITフリーランスの場合、会社員よりも住宅ローン審査が厳しくなるのは事実です。これを踏まえ、住宅ローンは独立前に組んでおくべきという論調も少なくありません。しかし本当にそうなのでしょうか?

たしかに会社員であれば住宅ローンの審査を通りやすいかもしれません。収入を増やしやすいITフリーランスといえども、独立後に安定した収入が期待できるとは限らないのも事実です。場合によっては、独立後に住宅ローンの支払いが厳しくなってしまう可能性も考えられます。それよりは、ITフリーランスとして活動していける目処がつくまで、万全の準備を整えていく方が安心だとはいえないでしょうか?本記事で紹介した住宅ローンの特徴を念頭に、自身にとってどのような選択をするのが最善なのか?総合的な判断を下すのが重要です。